FP&Aに必要なスキル (マインドセット編)

#007 Deloitteの「4 Faces of CFO」からFP&Aに必要なマインドセットを考える

FP&Aに必要なスキル (マインドセット編)
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#007 Deloitteの「4 Faces of CFO」からFP&Aに必要なマインドセットを考える

こんにちは、西崎俊です。このニュースレター「FP&A Camp」では、管理会計やFP&Aについてお話しています。

今回は実務スキルというよりはより抽象的な、心がまえというか、資質みたいなものについてお話ししたいと思います。
前回が「スキルセット」の話だとすると、今回は「マインドセット」の話だと思ってください。

今回紹介するのは、私が26歳くらいの時に出会って今でもことあるごとに見返しているDeloitteが出している「4 Faces of CFO」というスライドです。

デロイトの提唱する『4 Faces of CFO』では、CFO及びCFO組織の役割を、「攻め」の役割であるストラテジスト(戦略立案への参画)、カタリスト(戦略実行の推進)、「守り」の役割であるオペレーター(取引処理の実行)、スチュワード(統制環境の整備)、の4つに分類しています。変化の激しい環境下において、企業がその企業価値を向上するためには、CFO及びCFO組織がこれら4つの役割をバランスよく担うことが必要です。

Source: Deloitte Touche Tohmatsu Limited

これ、お題目としてはCFOの4つの側面すなわち役割を語っているものなんですが、これがそのまま、ファイナンス職に関わる全ての人、そしてFP&Aの目指すべき方向性でもあると思っています。
今回はこの4 Facesを見ながら、それぞれに関連するマインドセットの話をしていきたいと思います。

初出がいつのものか不明なのですが、2010年のCFO協会の出版物にはすでに紹介されているので、10年以上は経っているようです。

4 Faces of CFO

ちょっと抽象的ではありますが、FP&Aの仕事をしていると、確かにそうだよな、と頷く記述ばかりですのでぜひ読んでみて欲しいです。

それでは以下、CFOの4つの資質を確認しながら、CFOやFP&Aが組織内で果たすべき様々な役割や期待を確認にし、どのようなマインドセットが必要なのかみていきましょう。

ストラテジスト(戦略立案への参画)


CFOは企業の将来の方向性やビジョンを形成する際のキーとなる役割を果たします。
長期的なビジョンや戦略の策定、M&Aの検討、成長機会の特定など、経営層と共に企業の将来を設計する役割ですね。
これはFP&Aの責務として、本ブログでも何度も紹介する事項です。

共感できるのが、事業ラインは「主体的」「楽観的」に事業戦略を立てるので、ファイナンス組織はより「客観的」「悲観的」に戦略をみる立場であれ、と言っていることです。
これはCFO組織に属している方であれば何となくそう感じたことがあると思います。私が経験した3社すべてで、CFOやファイナンスの偉い人たちはそういった論調のことが多かったです。

ただ、サイトにも記載があるように、過度に批判的になってしまうのとは違います。
意見が衝突しすぎて何も進められない、といった状況は避けないといけないのが難しいところですよね。
事業ラインとCFO組織は一緒になって事業を推進していくわけですから、ロジックで論破するのが目的では無いわけですよ。

私もよく、事業部長とは「俺は今期120%達成の見込みでいる。西崎の見込みが90%なら、最終的な着地はちょうど100%超えるくらいになるだろ。笑」みたいな感じで話しています。
実際に私は、着地をコンサバに見がちな傾向があるようです。

この温度感って、事業ラインのマネージャーの器量に左右されるところもあるなと思っていて、ファイナンス組織の人間を”敵”だと思っている事業部長もいれば、うまい具合に使ってやろうという人もいます。
大抵は、ファイナンス組織の人間をうまくツールとして使える人の方が良い成績を収めているなという印象です。おだてて必要なデータをお願いしたりだとか、決裁を通してもらいやすくしたりだとか。

ファイナンス側も大事なのはそのあたりのバランス感覚というか。
数値ばかりを追って頭でっかちにならないように、リスクを伝えるべきところは伝えるけど、事業を推し進める時は一緒なって、何ができるのか?を考える。

できない理由ではなく、どうすれば達成ができるのか?を事業部とベクトルを合わせて考えていく姿勢が大事なんだというのが、実務をやっている上での勘どころかなと思います。

🧠
ストラテジストのマインドセット

ビジョンの共有:共有されたビジョンや目標を持って、その実現に向けて動く。

前向き思考:企業の将来を見据えて、より大きな成果を目指すために、新しい機会や挑戦を予測する。

客観視点:常に客観的な視点を持つことを忘れず、第三者目線からリスクを管理する意識を持つ。


カタリスト(戦略実行の推進)


ここでは、事業ラインが戦略を実行するためには、
年度計画・予算策定で方向性を正しく決め、
現場の行動にまで落とし込めるように事業評価指標を設定すること
が、戦略実行の推進役として求められるといっています。

これはシンプルで当たり前ですが、とても重要な指摘です。FP&Aの重要な職務は、予算の策定ですが、実は予算を立てるだけ立てて、それを実現するための実行支援までできているか?と問われると、ちょっと言葉に詰まってしまうかもしれません。

結局のところ、KGI、KSFを正しく理解・設定し、それを達成するためのKPIを分解して日常の行動指標まで落とし込む。いわばアクションにつながる示唆をどれだけ出せたのかで、FP&Aの価値は決まります。
上記のページにも記載がありますが、業績が不振だったり、目標が未達になりそうな時こそ、そういった助言が求められることが多いんですよね。

転職する時は業績が良い会社を選びがちだし、それは正しいことだと思います。ただ、業績が悪い中でFP&Aとして悪戦苦闘した経験というのは、とても価値があることです。

🧠
カタリストのマインドセット

変革志向:組織やプロセスの改善や変革を常に求める姿勢。

コミットメント:目標の達成に向けて全力を尽くす意志。

結果志向:アクションと結果に焦点を当て、具体的なアウトカムを追求する志向。

この攻めの顔二つはまさにFP&Aの核となるマインドセットをよく表していると思います。
かといって、もちろん攻めだけでは完成しません。
後半二つは、CFO組織の「守り」の顔です。

オペレーター(取引処理の実行)


「CFO及びCFO組織にとっての基本的な役割です」と記載がありますね。その通りだと思います。
ほとんどの経理パーソンにとってイメージする伝統的な経理の使命はこれかもしれません。

一見すると地味だし、つまらなく感じるタスクも多いかもしれませんが、 CFO組織に求められるものが変わりつつあっても、基本的なこの役割を確実にこなせないようでは、「攻め」の役割であるストラテジスト、カタリストに時間とリソースを割くことはできませんし、すべきではありません。

複式簿記が誕生してから600年以上、株式会社が誕生してから400年以上経ち、取引の量も種類もどんどん増え続けるなかで、取引を処理し記録する作業は効率化が繰り返されてきました。
多くの会計にまつわるソフトウェアやシステムが開発され、その動きはまだまだ加速しています。

表立って表彰されたりすることはなくとも、常に効率化を考え、サービスレベルとコスト効率を追求していく地道な姿勢はとても重要です。

また、なぜ日々の細かな取引記録が大事なのか?ステークホルダーの観点から考えてみることも大切です。
経理の仕事を長年やっていると、同じことの繰り返しでつまらないと思ったり、なんでこんな細かい作業しないといけないんだ?と思うこともあります。
しかし、アカウンティングの本質の一つは、シェアホルダーに対する説明責任にあります。
なぜセグメントごとに集計が必要なのでしょうか?収益認識の基準はなぜ細かく決まっているのでしょうか?それは、株主に対して十分な透明性を提供するためです。
株取引を経験したことがある人ならわかりますよね。株主は自分が保有している会社の業績に対する説明はいくら細かくあっても足りないくらいです。
会社員としての視点しか持っていないと、何でそんなことをしないといけないんだ、というマインドセットになってしまうのですが、
外部視点を持つと、株主への説明責任を果たすためには必要なことなんだという発想ができるようになります。

地道な日々の作業の積み上げが、シェアホルダーとの信頼関係構築に繋がっていることを常に意識しながら仕事をしたいものですね。

🧠
オペレーターのマインドセット

日常の実行:細かな業務の積み上げも嫌がらずに、日常業務の中での小さな成功を重視し、継続的な改善や向上を求められる志向。

効率志向:プロセスやシステムを最適化し、コストパフォーマンスを追求する。

協調性:チームや部門と連携し、会社の成功、そして全てのシェアホルダーの成功のために効果的に協力するマインド。


スチュワード(統制環境の整備)

財務報告に関する内部統制やコンプライアンスの観点がここ十数年さらに注目されるようになってきました。
アメリカでは2001年にエンロンの不正会計が明るみになってから、SOX法の制定、SECによる規制強化が推し進められてきました。一方日本では2015年に東芝の不正会計が発覚したのは記憶に新しく、コーポレートガバナンスの強化に対する市場の要請は、強くなるばかりのようです。

上記Deloitteのサイトで指摘されているのは、この役割においてコントロールを行う対象は、会計処理=金流に限らず、商流、物流、情報流にも及ぶということです。
確かに、下請法の違反や、商品の表示に関する不正、内部情報の流出などのニュースは後を断ちません。CFO組織にとっても、会計知識だけではなくビジネスプロセス・法規制・情報技術に関する理解力がこれまで以上に要求されるようになってきていると感じます。

実務の現場ではスチュワードというと、「データスチュワードシップ」という言葉も頻繁に聞かれるようになりました。

データスチュワードとは企業内のデータ品質管理を推進する責任・職責を指します。経理部員自身がデータスチュワードになる例は少ないかもしれませんが、データのオーナーとして重要な役割を持ちます。
たとえば、勘定科目やコストセンター、顧客コード等のマスターデータ管理には、IT部門だけでなく経理サイドの協力が必須ですし、データの文脈・意味を理解してカタログ化する役割もビジネス側との協業が必要です。

もはや企業のデータは最も重要な資産とも言える時代になってきました。
価値を生み出す攻めのCFO組織を作り上げていくためには、こうした強固な情報統制の基盤が整備されていることが必須の条件になっていくのは間違いないでしょうね。

🧠
スチュワードのマインドセット

誠実さ:財務報告やコンプライアンスにおいて正確さと透明性を保つマインド。

保護意識:企業の資産やリソースを守るとともに、リスクを管理する意識。

詳細志向:細部にまで注意を払い、誤りや不正確さを避ける姿勢。

まとめ

今回は少し抽象的なお話になってしまいました。
こういったマインドセットの話は、日々目の前の業務をこなしていると振り返ってみる時間がなかったりします。
忙しかったり、自分の仕事の意義を見失いそうになった時に、ぜひこの「4 Faces of CFO」を思い出してみてはいかがでしょうか?



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