#016 FP&Aへの転職でミスマッチを防ぐために理解しておきたい、職務領域の4つのタイプ
こんにちは、西崎俊です。 このニュースレター「FP&A Camp」では、管理会計やFP&Aについて情報を発信しています。
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さて、今回からは数回にわたってFP&Aのキャリアについてお話ししていきたいと思います。 私の周りでもそうですが、FP&Aになる人のキャリアは実は多種多様です。 みなさん、FP&Aというと「経理出身」というイメージが強いかもしれません。 実際に、経理出身の人は多いです。 名前としては経理だけど、業務としてはほぼFP&Aをやっているという人もたくさんいます。 ただ、FP&Aの業務においては経理以外の経歴も活かすことができますし、経理以外のバックグラウンドの人もたくさん活躍しています。 私も、最初は「営業事務」からキャリアをスタートしました。 他にも、コンサルや営業、ITなど本当にいろんな職歴の方がFP&Aの現場で活躍しています。
これからFP&Aへのキャリアチェンジを考えた時に
🧐
「自分の経歴がどうFP&Aの現場に活かせるのか?」
🔓
「FP&Aの仕事を始めるうえで、自分に足りない経験値はなんだろうか?」
といった疑問を持っている人も多いはずです。
そんな人に役立つかもな知識。 FP&Aでキャリアを積んでいくにあたって、意識すると良いフレームワークがあります。
🔠FP&Aの4つのタイプとは?
これは私が8年間FP&Aの仕事をしてきて、経験則で感じていることなのですが、 このフレームワーク(マトリックス)を意識すると、自分がどのようなキャリアを積んでいくべきなのかが明確になります。
今回はこのマトリックスに沿って、FP&Aの4つのタイプと、それぞれで活きる経歴、強みなどを紹介していきます。
マトリックスについて
図:FP&Aの4つのタイプ
図表の説明です。 まず横軸。 これは左側が経理寄りのFP&A、右側が事業よりのFP&Aという区分になります。 言い換えると、仕事で関わる対象が、財務三表から離れるほど右寄りになり、財務諸表をより深く見る場合は左側になるということです。
FP&Aは基本的には「ファイナンス」アナリストですので、財務数値の分析をするのがメインの仕事になります。 とはいえ、欧米のFP&Aの現場ではファイナンスからどんどん売上・事業戦略に染み出していくことも珍しくありません。
次に縦軸。 上側になるほど、マクロな視点となり、下側はミクロな視点ということになります。 FP&Aの仕事は会社のあらゆるレベルで発生します。
全社戦略をたてるような場合では、競合やマクロ経済の情報を詳しく見ている人もいれば、一つの事業や、工場や製品単位でコスト管理を細かく分析するのが責務のFP&Aもいます。 これらは基本的に同じ会計知識をベースにしつつも、基本スキルに加えて、求められる追加のスキル、尚可スキルが変わってくるイメージです。 企業側が求める人物像も、大体このマトリックスを使うとクリアになります。
これを意識していると、求人票に記載されているJob Descriptionも「これはBよりの案件だな、自分に合っていそう」といったように読めるようになってきます。
もちろん、最終的には全ての領域をカバーしたいのは前提です。 あくまで傾向や、自分の手持ちスキルであればどの領域から入っていけばいいのかの目安として捉えてください。
それでは以下で、それぞれ4つのタイプに分けて各タイプの人物像や求められるスキルについてみていきます。
👩🏻Aタイプ 経理寄りで全社みる
AタイプのFP&A
特に求められるスキル
ERP (財務会計) 制度会計 自分で仕訳切る 開示
活きる経歴
経理(開示や連結、財務経験ありの人) 税務 Big4(監査) ITコンサル
資格
簿記1級 公認会計士
Aタイプはどんな人?
日系企業では王道です。 公認会計士を取って、Big4で監査業務をしてました、という人もこの領域から入ると合うんではないでしょうか。 王道といえば王道なのですが、深い会計知識を持っている人はずっと経理にいたり、税務や内部監査に行ったりして、FP&Aに出てこない人も多いため、実はFP&Aとしては希少人材な感じもします。
制度会計について深い知識を持っているので「あるべき論」を一人で描けます。 管理する数値としては、財務三表上の数値が主であり、財務諸表についてCFO向けの分析を提出したり、全社の中長期の財務計画策定に関わったりします。
FP&Aのベースを支えるファイナンスのエキスパート
FP&Aの業務は多岐にわたりますが、実務レベルではまず勘定科目表ありきです。 全ての勘定科目について、それがどんな費用なのか正体がわからなければ、全体を理解した分析の説明ができません。
冗談に聞こえるかも知れませんが、 月次の会議をしていて「先月の実績で計上されてる、XXX費ってなんなの?」 という幹部からの指摘に、しどろもどろになって誰も答えられないなんていうことも無くはないわけです。
モデリングに際しても、ドライバーとなるコストの中身がなんなのか、いちいち調べながらモデルを組むのと、背後にある計算ロジックや仕訳のつながりを完全に理解した上で組むのとではスピードも違います。
会計の知識が強みになる
経理出身者であれば、ERPについても実務上の使える知識を持っているので、分析をする上でどこにどんなデータが入っていて、どうすれば見たい数値の全体像が取れるのか、というのがすぐわかります。
また、FP&Aとしては、管理会計要件と財務会計要件の調整が大きな課題となります。 財務会計要件のあるべき姿を頭にいれてないと、管理会計で実現したいことがうまく表現できません。
実務としては仕訳を切れるというのもとても重要です。
全社の会計の話をするので、連結決算経験者はとても重宝されます。 移転価格であったり、税務経験があると有利なパターンもここですね。
変わり種としては、ITコンサル出身という人です。 数は少ないと思うのですが、ITコンサルでSAP導入経験がある人なんかがFP&Aにいると、めちゃくちゃ強いです。部内で頼りにされること間違いなしです。
👱🏾♂️Bタイプ 経理寄りで部門つき
特に深く求められるスキル
管理会計 原価計算、SGAなど細かなコスト管理会計 ERPに関する横断的な知識 BIツール、SQL
活きる経歴
経理(原価計算、管理会計畑の人) SCM、営業事務、人事総務などのバックオフィス経験がある Big4出身(CFOコンサル) データアナリスト
資格
USCPA USCMA ビジネス実務法務検定
Bタイプはどんな人?
「部門別のCFO」です。 実はこの領域にマッチする人が、潜在的な人口としては一番多いような気がしてます。 単純に事業付きなので、各事業部で人数が必要であり、需要としても数が多いというのもあります。
私自身も、自分はこの領域であると自覚してます。
外資系だと、Business Finance(ビジネスファイナンス)部などの名称なこともあります。 日系だと経理出身者が大多数を占めますが、欧米だとそうとも限らず、最初から部門付きFP&Aとしてキャリアを積む人も多いようです。 欧米はよりジョブ型であることが影響しているのかもしれません。
事業責任者との協業が鍵
Aとの違いは、それぞれの部門に深く関わっていくことです。 レポートラインも、AがCFOに対するレポートがメインなのに対して、 BはCFOだけでなく事業責任者(Line of Business, LOB)に対して複数レポートラインを持ちます。 場合によっては、複数の部門を兼務で見ることも。
各部門に深く潜るほど、分析も深くなっていきます。 分析が深くなるというのはどういうことか。 個別事象への対応、分析粒度が事業別、営業所別、製品別など、どんどん細かくなっていきます。
そうすると、Excelでのモデリングだけでは足りなくなってきます。 必然的に、BIやSQLが必要にになってくるわけです。(他のタイプがBI使わないということではありませんが)
製品別となると、原価計算など細かいレベルでの数値を見た経験がある人は、入っていきやすい領域になります。
お題目としては部門のCFOではあるものの、実際のところは、BS,CFはあまり見ず、PLに対する比重が大きいです。 より各論になりますし、職責がコスト管理だけというポジションもあったりします。
経理以外の経歴が活かせる
ファイナンスビジネスパートナーとして、事業部内のあらゆる数値を分析しますので、財務諸表には出てこない計数の分析も、Aより入ってきやすいです。その意味で、経理以外の経歴が活かしやすい領域です。
各部門に深く関わるほど、周辺プロセスの理解も大事になってきます。 SCMなどの関連部署での経験が活きてくることも多く、ERPで言えばロジ周りを知っていると強みになったりします。
Big4出身者でも、監査ではなくCFO機能コンサルとかをやっていた方は、Aタイプよりこっちの方が親和性があるイメージです。 これは完全に印象論ですが、スキル云々というよりは、CFOや現場の人と話す経験をした人たちって、”コンサルでできることの限界”みたいなのを感じていて、 「ビジネスサイドを動かしたい、より手触り感のある仕事をしたい」 という動機で事業会社に来る人が多い気がするんですよね。 そうすると、より現場に近い事業部付を希望するケースが多いのかもしれません。
事業部だけでなく、「コーポレートファンクション付き」というパターンもあります。 コーポレートファンクションっていうのは、日系でいうと間接部門ですね。 つまり、HRやSCM、調達などの部内で数値に関わる人のイメージです。
私の元同僚で、今はHR Financeなんていうタイトルの仕事をやっている人を知っています。 ファイナンス部門ではなく人事部の所属ですが、ヘッドカウントの管理・人件費の管理・退職金の計算など、明らかにFP&Aといって差し支えないものをやっているみたいです。 退職金会計って専門的ですし、なかなか複雑なトピックですよね。
あとは、(O2C)Order2Cash担当FP&Aなんていう求人も見ました。 特定の部門というよりは、部門横断で「プロセス」付きのFP&Aといったところでしょうか。売掛金・買掛金の管理をメインに、与信管理なども職務になってました。
また、製造業では工場付きのFP&A(Plant FP&A)も独立したひとつのポジションとして設置されていることが多いです。
こういった専門的なトピックを扱うFP&Aは、他部門経験者であることのメリットがすごく活きるケースだし、会計以外の専門知識もプラスで扱うので、社内だと代替が効かない人材になる場合も多いです。
あるある話として、タイプAとタイプBはコストの配賦をめぐってケンカすることがよくあります。
👱🏼♀️Cタイプ 事業よりで全社みる
特に求められるスキル
経営戦略 コーポレートファイナンス ロジカルシンキング 市場調査
活きる経歴
戦略コンサル出身 投資銀行、ファンド出身 調査会社・シンクタンク
資格
MBA 証券アナリスト
Cタイプはどんな人?
ファイナンスを学んだMBAみたいな人たち 全社の経営戦略に関わるタイプで、CXOクラスとのハイレベルな議論が多いパターンです。 ファイナンス職というタイトルであっても、経営戦略のモデルへの知識と実践経験が必要な領域ですね。
財務諸表の理解については、それぞれのつながりを理解してモデルを作成できることが要件であり、複雑な個別論点についてはそこまで深い知識は求められません。
一方で、コーポレートファイナンスは必須のスキルとなってくるため、バリュエーションなどの経験がある人、メガバンクなど銀行出身者がここに向いていそうです。
まあ、ファンドの人が事業会社に来てFP&Aをやりたい動機があるかというと、かなりレアケースなのではないかと思いますが...
どちらかというと、ポスト戦略コンサルの受け皿としての需要というイメージがあります。 大抵は、”コンサル経験者尚可”という記載がある求人の場合、この領域の仕事になるでしょう。
私の同僚だとシンクタンク出身の方がいるんですが、もう全てのプレゼンが本当にロジカルで、ファクトベースで論理が明快です。一緒のミーティングに出たことがありますが、百戦錬磨のプロCFOから、一言も指摘なく会議を終えてました。 つっこまれることを想定して大量のバックアップ資料を用意してお茶を濁そうとしていた自分が恥ずかしくなりましたね笑。
Bタイプの私にとって正反対の領域なので、同じ部署にいても全く別の人種という感じがします。 合う合わないというよりは、自分に持っていない経験やスキルを持っていて憧れという感じですね。
マクロ視点の分析
会社としてのハイレベルになるということは、さらに広い概念でいうと他社比較、市場の調査、さらにはマクロ要因といった分析もでてきます。 全社レベルの戦略策定やGo to Marketに関わるため、マーケットシェアの分析、市場調査などがタスクとして入ってくることもあるんですよね。 ここはコンサルの得意領域ですし、絶対Speedaは使ったことがある人たちです。
マーケットの分析としてTAM,SOM等の設定をしないといけないのですが、これも奥が深く、てごわい分野です。 自社リソースだけでは限界がありますから、Gartnerとか矢野経済などの調査会社に依頼して分析してもらったりとか、外部と連携することもよくあります。
あとは、全社プロジェクトとして、パートナーやアライアンスの拡大など、渉外的な仕事もやるイメージがあります。
👩🏾🦱Dタイプ 事業よりで部門付き
特に求められるスキル
マーケティングの知識 CRMシステムの知識 新規事業開発経験
活きる経歴
営業・マーケティング出身 事業企画経験者 中小企業やベンチャー出身 データサイエンティスト
資格
中小企業診断士 統計検定
Dタイプはどんな人?
こちらも部門付きのFP&Aですが、Bタイプとの違いは、”トップラインへのコミットメント度合い”と言えます。 これはそのまま、一緒に仕事をする事業部長の業績評価がどこにあるか、どこまでの権限を持っているかと言い換えることもできます。
事業の責任者って、完全に売上のみの場合もあるでしょうし、PL全てに責任を持つ場合もあります。 特に外資系だと、日本法人は実態としては販売会社ということも多くて、LOBがコスト管理にもつ権限が狭いので、必然的にパートナーとなるFP&Aも売上寄りの成果物を求められるケースが多くなります。
事業部長のパートナーとして、彼らが抱える問題を解決するというのがファイナンスビジネスパートナー全員の責務ですが、 結局、事業部長(LOB)の関心ごとは、自部門の売上や収益性、フォーキャストがメインです。 どんな施策が刺さるのか、次の打ち手はなんなのか、この問いに常に数値を使って、時には新たにKPIを開発して答えていくのがこの領域のFP&Aの責務です。 私も外資に転職してからは、自分で仕訳を切る機会はめっきり減り、売上のフォーキャストと睨めっこすることが多くなりました。
営業・マーケ経験が活きる
もちろん、新規事業の開発にも関わるため、ここはCタイプとも被るわけですが、 どちらかというとより泥臭く、トライアンドエラーを繰り返していくようなイメージです。 Cタイプの人がPDCAを回さないとは言いませんが、Dタイプはもっと短期のPDCAを繰り返してナンボ、という感じですかね。
部門つきで事業部よりだと、営業の現場と一緒に仕事をすることも多く、時にはバチバチに対立する可能性があります。 ここで、営業職の経験の有無差が大きく出ます。 現場の気持ちもわかるし、分析数値を説明する際の説得力も違います。
また、分析のサイクルが最も早く、アジリティが求められるのがこのタイプです。 時には週次、日時での予実分析を求められることさえあります。 スピード感が早いビジネスサイクルに慣れているベンチャー出身の人はこういったJob DescriptionのFP&Aから入ると他の人より有利でしょう。
ファイナンスの隣接分野として
業界によっては、案件ごとに収益を分析したり、値引きの承認などの仕事が待っていたりします。 いわゆるCPQといわれるConfigure(部品構成)、Price(価格)、Quote(見積書)のシステムを使って価格決定や収益性に対して責任を持ちます。 CRMシステムを触る機会も、Bタイプより多いでしょう。
あるいはマーケティング施策のROI分析をマーケと一緒にやったりするケースもあるでしょうから、基本的なマーケティングについての知識も求められます。
製品レベルのGTM(Go To Market)戦略の策定に関わったりと、外資系だとSaaSでよくあるPDM(プロダクト・マネージャー)の指向に近いような人もいそうです。
またDタイプの隣接分野として、 SaaSの業界でよく設置されている「Revenue Strategy」、 「Revenue Ops」、「 Sales Strategy」といった部門があります。 この領域にいる人たちは、受注・ARRなどのKPI管理はもちろんのこと、 ・販売計画 ・テリトリープランニング ・クオータプランニング などが職務範囲になってきます。 ここまでになってくるとFP&Aと言えるか微妙なところですが、FP&A経験者のキャリアパスとしては、これらはめちゃくちゃアリな分野です。 扱うKPIや方法論、ツールとか、スキルとしてはスライドして持っていけるものが多いからです。
さらに、こういったポジションはプロフィットセンタ扱いなのでベース給与が高いんですよね。 FP&Aも非常に給与水準が高い職種ですが、それよりもさらに給与レンジが高いってすごいですよね。 そのかわり、コミュニケーションの複雑さや定型でない業務、より創造性を求められそうです。
近年では、「FP&AからXP&Aへ」という潮流があり、財務予算の策定は販売計画などと密接に連携するのが常識に変わりつつあります。 FP&Aと周辺領域の垣根はどんどんなくなってきています。
SaaS界隈のSNSでは営業とマーケのバトルなんかが取り沙汰されてますが、ファイナンスも他人ごとではいられませんね。
🧦まとめ
今回はFP&Aの4つのタイプをマトリックス形式で考えました。 少しでもFP&Aという職種に対しての解像度が上がっていれば幸いです。
正直、かなりファイナンス以外のトピックも多かったので、「これってファイナンスで役に立つの?」と思うかもしれませんが... 断言します、役に立ちます。
FP&Aの業務は絶対に経理経験が必要、という転職エージェントや、記事も見かけますが、全くそんなことはありません。それは狭い世界の認識です。 もちろん、最低限の財務諸表の知識は必要ですが、営業出身だろうが、経理出身だろうが、それぞれの強みを活かして活躍することができます。 というよりは、そのように多様な人材が活躍できない組織はこれから生き残っていけません。 単に、あなたの会社が育成をサボっているだけです。
ぜひそれぞれの知識を活かして、FP&Aの現場で活躍する人が増えたら嬉しいと思っています。
それでは!
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