このパックについて
本パック「経理・FP&Aのための 生成AI実務活用パック」へようこそ。この章は無料で全文公開しています。
生成AIをめぐる状況は、ここ数年で大きく変わりました。チャットに質問すれば、それらしい答えが返ってくる。要約も、文章のたたき台も、表計算の関数も、聞けば出てくる。けれど、実際に経理・FP&Aの現場で使おうとすると、多くの人が同じ壁にぶつかります。
「AIを使える」と「実務で成果を出せる」は、別物である。
汎用的な質問に汎用的な答えが返ってくることと、月次の予実差異コメントが経営会議にそのまま出せる水準で上がってくること、繰延税金資産の回収可能性の論点が、自社の会社分類を踏まえて整理されることは、まったく違います。前者は誰でもできる。後者には、(1) 実務の文脈(J-GAAP、上場・中堅の前提、自社の数値)を正しく与えること、(2) 出力のどこを人が検証すべきかを設計しておくこと、の2つが要ります。この「文脈設計」と「検証設計」こそが、実務で成果が出るかどうかの分かれ目です。
本パックは、そのギャップを埋めるために作りました。実務シーン別に最適化した120本超のプロンプトと、架空企業の数値で実際に動かした出力サンプルをセットで収録しています。プロンプトは、貼って実行すればたたき台が出る形に整えてあり、各プロンプトには「どこを人が確認すべきか」を明示した安全弁(Verification)を組み込んでいます。
- 対象:経理(決算・連結・税務・管理会計)、FP&A、経営企画、財務、IR、内部統制の実務担当者・マネージャー
- 前提:日本のJ-GAAP・上場/中堅企業の実務。海外(US-GAAP/SEC/SOX)の前提は持ち込みません。
- 構成:導入4章 + 実務18モジュール(プロンプト・雛形あわせて120本超)
全体構成の地図
本パックは、導入4章と18の実務モジュールで構成されています。導入章は「全モジュールに共通する土台」、実務モジュールは「業務シーン別の実戦プロンプト集」という関係です。
導入4章(土台)
| 章 | タイトル | 何が身につくか |
|---|---|---|
| 00 | はじめに・使い方(本章) | 全体像、プロンプトの読み方、目的別の読む順、安全な使い方の前提 |
| 01 | プロンプト設計の型(RTCSTV) | 全プロンプトに共通する6要素の構造。自分でプロンプトを書き換え・拡張するための土台 |
| 02 | 機密データの安全な扱い方 | 未公表数値・社外秘・個人情報をAIに渡すときの判断基準。使い始める前に最初に読む章 |
| 03 | 日本の制度対応の前提 | J-GAAP・日本の税務/開示の枠組み。海外前提を持ち込まないための共通認識 |
実務18モジュール
各モジュールは独立して使えます。自分の担当・関心から拾い読みして構いません。番号順に読む必要はありません。
| No. | タイトル | 主な用途 |
|---|---|---|
| M1 | 予実管理・差異分析 | 予実差異の原因分解・コメント・着地見込み・Next Action |
| M2 | 取締役会・経営層向け資料 | 取締役会資料、経営層向けサマリー、説明ナラティブ |
| M3 | Excel/スプレッドシート | 関数・数式の作成、表計算の効率化、データ整形の補助 |
| M4 | 月次・四半期決算 | 決算スケジュール、増減分析、開示前チェック、注記のたたき台 |
| M5 | 予算策定・事業計画 | 予算の組み立て、前提整理、事業計画の数値化とストーリー |
| M6 | KPI設計・SaaS指標 | KPI設計、SaaS指標(ARR・NRR・ユニットエコノミクス等)の整理 |
| M7 | データ分析・リサーチ | データ分析の設計、市場・競合リサーチ、仮説検証 |
| M8 | コミュニケーション | 社内外メール、議事録、依頼・説明文の作成 |
| M9 | 制度・基準のキャッチアップ | 会計基準・制度改正の要点整理、影響度の当たりづけ |
| M10 | 業務の仕組み化 | 業務フロー・マニュアル化、チェックリスト、定型業務の標準化 |
| M11 | 連結決算・グループ経理 | 連結仕訳、内部取引消去、グループ経理の論点整理 |
| M12 | 税務・税効果・申告調整 | 別表調整、繰延税金資産、移転価格、グループ通算、消費税区分 |
| M13 | 資金繰り・財務・資金調達 | 資金繰り表、財務分析、資金調達の検討材料 |
| M14 | IR・開示・株主総会 | 決算短信・有報の補助、IR想定問答、株主総会の準備 |
| M15 | 内部統制・監査対応・J-SOX | 内部統制の文書化、監査対応、J-SOXの整備・運用評価 |
| M16 | 原価計算・製造業向け | 原価計算、原価差異分析、製造業特有の論点整理 |
| M17 | M&A・投資判断 | 投資判断の枠組み、デューデリジェンスの論点、バリュエーション補助 |
| M18 | インボイス・電子帳簿保存法 実務対応 | インボイス制度・電子帳簿保存法への実務対応 |
モジュールは「主戦場(経理・FP&Aで使用頻度・効果が高い領域)」から「汎用補助」まで濃淡があります。まずは自分の担当に直結するモジュールから入り、慣れてきたら隣接領域へ広げるのがおすすめです。目的別の読む順(後述)も参考にしてください。
プロンプト構造の読み方
本パックの各プロンプトは、RTCSTVという共通の型で書かれています。これは、AIに「役割・依頼・文脈・出力形式・思考手順・検証」をもれなく伝えるための6要素です(詳しくは 01章「プロンプト設計の型(RTCSTV)」 で解説します)。読むときは、次の6つのブロックに分かれていると理解してください。
| 記号 | ブロック | 役割 |
|---|---|---|
| R | # Role | AIに与える役割。「日本の上場/準上場企業のFP&A」「J-GAAPの税務担当者」など、日本・J-GAAP・上場/中堅の前提を明示しています |
| T | # Task | やってほしいことの本体(依頼内容) |
| C | # Context(差し込み欄) | あなたが自社の情報を埋める欄。 ここの質が出力の質を決めます |
| S | # Structure | 出力フォーマット(表・見出し・文字数など) |
| T | # Thinking | AIにたどってほしい思考手順 |
| V | # Verification | 人が確認すべき点・安全弁。 「※要確認」など、鵜呑みにしてはいけない箇所を明示します |
差し込み欄(Context)の使い方
# Context ブロックには、2種類の差し込み記法があります。ここを埋めるほど、出力は自社の実態に沿った精度の高いものになります。
【 】(角括弧の空欄)=自社の数値・前提を埋める欄 例:対象期間:【 例:2026年5月度(単月) 】→ ここに自社の対象期間を書き込みます。例:は記入のヒントです。埋めずに実行しても動きますが、具体的にするほど出力精度が上がります。【貼り付け】=データ表をそのまま貼る箇所 例:数値データ(売上・利益の予算/実績/前年):【貼り付け】→ Excelやスプレッドシートの表を、そのままコピー&ペーストします。整形は不要で、AI側が読み取ります。
各プロンプトのページの読み方
実務モジュールの各プロンプトは、次の並びで掲載されています。この順に目を通すと、用途の把握から実行・注意点までが一度で分かります。
- 見出し(例:
M1-1. 予実差異コメント自動生成)— そのプロンプトの名前 - 用途 — どんな場面で使うか
- プロンプト本文 — RTCSTVで書かれた本体(コードブロックをそのままコピーして使えます)
- 入力時の注意 — 機密の扱いなど、使う前に押さえておく実務上の注意
- 一部のプロンプトには実出力サンプル(架空企業の数値で実行した出力例)を併載しています
使い方はシンプルです。 プロンプト本文のコードブロックをコピー →
【 】と【貼り付け】を自社の情報で埋める → 利用するAIに貼って実行 → 出てきたたたき台を、# Verificationの観点で人が検証して仕上げる。この最後の「人が検証する」工程が、実務品質の核心です。
目的別の読む順(3ルート)
どこから読むか迷ったら、自分に近いルートを選んでください。番号は実在のモジュール番号です。導入章(00〜03)はどのルートでも最初に通る共通の土台です。
ルート1:経理マネージャー向け(決算・税務・連結が主戦場)
決算・税務・連結の実務品質と、経営への説明力を高めたい方向け。
- 00 → 02 → 03(はじめに → 機密データの扱い → 制度対応の前提。02は必読)
- M4 月次・四半期決算(決算実務の土台)
- M11 連結決算・グループ経理(グループの論点)
- M12 税務・税効果・申告調整(誤りの実害が大きい領域。安全弁を厚く運用)
- M1 予実管理・差異分析(数字を経営に説明する力)
- M15 内部統制・監査対応・J-SOX → M14 IR・開示・株主総会(統制・開示まで視野を広げる)
- 01 RTCSTV(自分でプロンプトを改良したくなったら)
ルート2:FP&A・経営企画向け(予実・計画・経営資料が主戦場)
予実・計画・KPIから、経営の意思決定を支える資料づくりまでを強化したい方向け。
- 00 → 02 → 03(同上。02は必読)
- M1 予実管理・差異分析(FP&Aの主戦場)
- M5 予算策定・事業計画(計画づくり)
- M6 KPI設計・SaaS指標(KPI・SaaS指標の設計)
- M2 取締役会・経営層向け資料(経営層への伝え方)
- M7 データ分析・リサーチ → M17 M&A・投資判断(分析・投資判断へ展開)
- 01 RTCSTV(プロンプトを自社流に拡張)
ルート3:若手・これからの人向け(まず手を動かして慣れる)
経理・FP&Aの経験が浅い方、生成AIを実務で使い始める方向け。汎用・効率化から入り、徐々に専門領域へ。
- 00 → 02(はじめに → 機密データの扱い。02は必ず先に)
- 01 RTCSTV(プロンプトの型を理解する。ここを押さえると応用が利く)
- M3 Excel/スプレッドシート(日々の作業効率化から)
- M8 コミュニケーション(メール・議事録・依頼文)
- M10 業務の仕組み化(定型業務の標準化・マニュアル化)
- M1 予実管理・差異分析(中核業務に挑戦)
- 03 日本の制度対応の前提(土台を固める) → 担当に応じて各モジュールへ
上記はあくまで目安です。自分の「今いちばん困っている業務」のモジュールから読むのが、いちばん早く成果につながります。
使い始める前に(必読)
本パックを実務で活かすために、次の3点を必ず守ってください。便利さの裏側にあるリスクを理解して使うことが、結果的にいちばんの近道です。
1. まず02章「機密データの安全な扱い方」を読む
経理・FP&Aが扱うデータには、未公表の業績、決算前の数値、社外秘の取引、個人情報などが含まれます。これらを安易にAIへ貼り付けると、情報漏えいやインサイダー上の問題につながりかねません。本編のプロンプトを実行する前に、必ず02章を読み、利用するAIの機密区分(無料版/法人契約/API等)と、自社で渡してよい情報の範囲を確認してください。各プロンプトの「入力時の注意」にも、マスキングや丸めの指針を記載しています。
2. 出力は必ず人がファクトチェックする
生成AIの出力は、たたき台です。数値・固有名・計算・引用には誤りが混じりえます。各プロンプトの # Verification ブロックと「※要確認」表示は、どこを人が検証すべきかを示すための安全弁です。そのまま提出・対外発信しないこと。数値は元データと突合し、計算は検算し、事実は一次情報で確かめてから仕上げてください。
3. 制度・税務・開示の最終判断は、専門家と一次情報に委ねる
会計基準・税法・開示制度は頻繁に改正され、生成AIは古い前提や誤った要件を記憶していることがあります。税務は税理士、会計・監査は監査法人、開示は専門家の確認を前提とし、法令・通達・適用指針などの一次情報の原文を必ず確認してください。本パックの出力は、専門家相談・実務作業の「前段の論点整理」として使う設計です。最終判断を本パックの出力に委ねないでください。
アップデートとサポート
アップデート提供について
会計基準・税制・開示制度の改正や、生成AIモデルの進化に合わせて、プロンプトと解説は随時アップデートします。制度改正(税率・適用時期・要件の変更など)が生じた場合は、該当モジュールの記述を見直します。最新の内容は本パックの該当ページでご確認ください。 本パックの記述と一次情報が食い違う場合は、一次情報(法令・通達・適用指針の原文)を正としてください。
サポート窓口
使い方のご質問、内容に関するフィードバック、改善のご要望は、下記までお寄せください。いただいた声は、今後のアップデートに反映します。
- お問い合わせ先:【 サポート窓口のメールアドレス/問い合わせフォームのURL 】
- 想定する内容:プロンプトの使い方、収録テーマへのリクエスト、誤記・改善のご指摘 など
なお、本パックは一般的な実務の参考情報を提供するものであり、個別の会計・税務・法務に関する助言ではありません。個別案件の判断は、必ず貴社の顧問専門家にご相談ください。
安全に使うために:本パックのプロンプトは、自社の数値・データを貼り付けて使うことを前提としています。実行の前に、必ず (1) 02章「機密データの安全な扱い方」で機密の扱いを確認し、(2) 出力は人がファクトチェックし、(3) 制度・税務・開示の最終判断は専門家と一次情報に委ねてください。生成AIは強力なたたき台製造機ですが、責任を持って仕上げるのは、いつも人の仕事です。